評価:
9点Story
戦国最強の武将・⻁永は、覇権を狙う五大老と敵対し命をかけて戦う武将。彼に敵の包囲網が迫っていたある日、英国人航海士、ジョン・ブラックソーン(後の按針・コズモ・ジャーヴィス)が⻁永の領地へ漂着する。⻁永は、語学に堪能でキリスト教を信仰する戶田鞠子(アンナ・サワイ)に按針の通訳を命じ、次第に按針と鞠子の間には固い絆が生まれ始める。一方で按針を利用して窮地を脱する⻁永だが、按針から世界を見聞きし、幾度も命を救われることで侍の地位に取り立てることに。そんな中、五大老の脅威が次々に迫り、ついには絶体絶命に追い詰められる⻁永。しかし彼の勝利への種まきは按針の漂着からすでに始まっていたーー。⻁永の壮大なる謀り事、果たして彼は、按針と共にこの乱世を制することができるのか!? Filmarksより
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Review
日本ほど、すべての言動や物事に対して、個々人が「解釈」を求められる国は無いのではないか。
出自、身分、信条、主従関係、様々な隔たりにおける、ありとあらゆる様式やしきたりの中で、言葉通りではないその裏の更に奥底に存在する真意を汲み取り、適切な解釈をして、発言し振る舞わなければ、立ち行かなることは、今現在の日本社会においてもままある。
それこそ、一時期「忖度」というキーワードがネガティブな意味合いで政治報道を賑わせたが、これも日本という国の文化や社会性の根幹部分に存在し続けている要素であり、良くも悪くもこの国の本質的な性質なのだろう。
基本的には日本語という一つの言語しか扱わない国において、これほどまでに解釈を求められる文化は、その是非はともかくとして、他国の文化からは、やはり「異様」に見えることだろう。
イギリスから流れ着いた船の操舵手“ジョン・ブラックソーン”を、文字通り物語の舵取り役に据えて展開されるストーリーは、必然的に英語と日本語が混在し、ヒロインでありキーパーソンである“戸田鞠子”が常に通詞しながら会話が進行する。
そこにもやはり、日本文化ならではの「解釈」が存在していて、彼女は常に双方が発する言葉の裏に存在する本音や本質を汲み取って伝えていく。
それぞれの感情や思惑が複雑に入り組みつつ、鞠子の通詞を通して言語化されるその台詞回しによる重厚なストーリーテリングが、戦国の世の思想性や人間通しの関係性を顕にし、これまで我々日本人ですら観たことがない「時代劇」を創造していたと思える。
アメリカ資本で製作されたスペクタルな「時代劇」が、これほどまでに日本という国と日本人そのものの本質を射抜いた説得力に溢れた作品になっていたことに、何よりも衝撃を覚えた。
そこにはやはり、主演俳優でありプロデューサーも務めた真田広之の強い「意志」と、日本人俳優としての「矜持」が、ほとばしる熱量と共に反映されていたと思う。
一日本人として鑑賞していても、登場人物たちの言動やストーリーテリングには、決して表面的ではない思惑や意図が満ち溢れていて、物凄くディープな世界観を攻め込んでいく製作姿勢に感嘆した。
徳川家康をモデルにした主人公“吉井虎永”をはじめ、すべての登場人物たちは実在の歴史上の人物をモデルにしつつもフィクショナルなキャラクターとして造形されている。
基本的なストーリー展開は、実際の日本の戦国史を敷いて展開されていくけれど、個々のキャラクターの描かれ方やその顛末などにおいては、私たち日本人が“知っている史実”や“イメージ”とは、意図的で明確な「相違」が生じていた。
ここにも、史実における「解釈」に対しての本作の製作陣の意思表示があったのではないかと思える。
歴史上の人物たちを描き出すに当たって、伝わっている固有名詞や人物像、また「史実」とされるものを用いて忠実に描き出すことが、必ずしも歴史に対する正しい解釈とは限らないということ。
ラストシーンで、主人公虎永自身が発していたように、「勝てば官軍」であり、「史実」というものは、あくまでもその時代の“勝者”が作り出したものに過ぎないのかもしれない。
本作は、真田広之のプロデュースによりに、外国資本の「日本」を舞台にした映像作品としては例を見ない規模で、日本人キャストや日本人スタッフを積極的に登用した上で、欧米の最高品質のクエリティブ力と、芳醇な資金力によって、説得力あふれる“日本描写”に成功している。
ただし、そこで映し出されていたものは、決して私たち日本人がよく知る「日本」ではなく、私たち日本人も初めて見る「日本」の姿だった。
それこそが、歴史や事実に対する「解釈」に真摯に向き合い、新たな世界観の創造に勇猛果敢に挑んだこの作品の最大の“戦果”だったと思う。そして、それを率いた真田広之には、今一度大きな“勝ちどき”を上げてほしい。
Information
タイトル | SHOGUN 将軍 SHOGUN |
製作年(放映期間) | 2024年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | |
脚本 | |
撮影 | |
出演 | |
金井浩人 | |
穂志もえか | |
阿部進之介 | |
西岡徳馬 | |
竹嶋康成 | |
倉悠貴 | |
洞口依子 | |
蛍雪次朗 | |
向里祐香 | |
宮本裕子 | |
奥野瑛太 | |
黒川武 | |
井田裕基 | |
篠井英介 | |
鑑賞環境 | インターネット(字幕・Disney+) |
評価 | 9店 |
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