「TOKYO TRIBE」<7点>

2015☆Brand new Movies

 

好きか嫌いかで言えば、好き。
キャラクターづくり自体は、原作に忠実なキャラも、映画独自のオリジナリティを出したキャラも、総じて良い。
ただ、ストーリーがあまりに雑すぎた。
“こういう映画”なので、雑多なのは大いに結構だが、ストーリー展開として盛り上がりに欠けたことは否めない。娯楽映画としてのストーリー的な巧さは、もっといくらでも出せたと思う。
そうすれば、もう一味も二味も”サイコー”な映画になったろう、と大変勿体無く思う。

井上三太の原作「TOKYO TRIBE 2」は、ファッション誌「boon」での連載中から単行本を買って愛読していた。
田舎のダサい高校生だった僕が、どうやってこの漫画を知り、単行本を集めるに至ったか全く思い出せない。けれど、自分の住む世界とあまりにかけ離れたこの漫画の「欲望」と「狂気」の世界観を、まるで“いけないものを見るような”感覚で密かに楽しんでいたことを思い出す。

その欲望と狂気の世界観を園子温が撮る!という報は、かつての“いけない”感覚を呼び起こし、“ワクワク”というよりも“ドキドキ”に近い期待感を生んでいた。

結果として、この映画の監督が園子温であったことは、「成功」だったと思う。
この作品とキャラクターたちが表す、熱さも、愚かさも、可笑しさも、恐ろしさも、下らなさも、その要素は総て園子温という表現者が持つ資質に合致していた。

だからこそ、前述の“勿体無い感”が際立つ。
ストーリーは、“馬鹿”がつくほど単純でいい。「ケンカを売った」「ケンカを買った」「どちらかが勝った」それでいいのだ。
ただ、せっかく揃えた濃いキャラクターを巧く使って盛り上げて欲しかった。

“全身”にアブラが乗り切っている鈴木亮平は、主人公の敵役である“テラ”を原作とは180度異なるキャラクター性で表現し、映画独自の悪役スターを演じきっていた。

主人公“海”を演じたヒップホップミュージシャンのYOUNG DAISは、“テラ”とは逆に原作に忠実な主人公像を完璧に演じており、演技初挑戦とはとても思えない。

窪塚洋介は、「池袋ウエストゲートパーク」の“キング”役を彷彿とさせる存在感を見せ、彼が“窪塚洋介”である所以を久方ぶりに証明してくれている。

完全に「無名」の清野菜名と坂口茉琴は、見事過ぎる美少女アクションを繰り広げ、この映画のアクション性を娯楽性を司っている。

“ブッバ”役の竹内力は完全に暴走気味でこの支離滅裂な映画世界の中においても“浮いている”が、美香さん巨大な胸を真正面から鷲掴みにされては、もう何も言えねえ。

そして、“狂言回し”として全編通してプロ並みのラップを披露する染谷将太が素晴らしい。

プロの役者も、プロのラッパーも、出演陣が総じて良かっただけに、それぞれに印象的な見せ場や、壮絶な死に様を用意してあげて欲しかったと思う。そういう部分が軽薄だったため、映画としての盛り上がりにかけてしまっていた。

“ラップミュージカル”とイントロするだけあって、“プロ”を揃えたラップによるミュージカルシーンは、どの場面も非常にエモーショナルだった。
映画を観終わり、「サウンドトラックが欲しい!」と思えたのは久々だ。それだけでも、この映画の価値は大きいと思える。

 

「TOKYO TRIBE」
2014年【日】
鑑賞環境:DVD
評価:7点

予告編

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